ごめんね

 

 

 ただそれだけが書かれているメモが、誰もいない部屋に置かれていた。

 うつろな目で室内を見渡した僕の目に、

 真っ白なウェディングドレスが飛び込んできた。

 こんなの置いてって…。赤い外套は着ていってるのに。

 ドレスを着たマネキンの横の壁に、空になったハンガーが虚しく掛かっている。

 結局名前も知らないまま…さよなら、なのか…。

 

  

2003年聖夜記念

赤い外套を着た女

編の下


ジュン     2002.12.24

 

 

 

 僕はしばらくベッドで仰向けになっていたけど、意を決してキッチンに立った。

 約束だから。

 煮込みハンバーグ。

 彼女はいなくなっちゃったけど、約束は約束。ちょっと意地もあったとは思うけどね。

 気合を入れて準備してただけに、15個も出来上がってしまった。

 冷凍するのはイヤだから、全部煮込んでしまうことにする。

 今日と明日でなくなるかな?

 

 寝るのは今日もコタツにした。

 僕がベッドに寝たら、彼女がこの部屋にいた痕跡がなくなってしまうような気がして…。

 我ながら女々しいよね。

 それから、部屋を真っ暗にしたとたんに涙が溢れてきて…。

 全然止めることができなかったんだ。

 あまりに情けないから、ほかのことを考えることにした。

 そういや、明日はクリスマスイブじゃないか。

 赤い外套って、そういやサンタみたいな…。

 いけない。また彼女のことを考えてしまう。

 違うこと。違うこと…、そうだ。

 レイが24日午前指定でプレゼントを送ったってメールしてきてたっけ。

 どうせ、アイツのことだから、インスタントラーメン100袋とかそんなとこだろな…。

 ま、失業者にはありがたいけど。まさか、前の前みたいに、靴下200足みたいなのじゃないよね。

 

 悪い方の予感は大当たりだった。

 翌朝、宅配便の業者さんが運んできたのは、ダンボール20箱に入った…トイレットペーパーだった。

 は、はは…。どこに置いておこうかな…。

 それより不思議なことがあった。銀行印がなかったんだ。

 受領の印鑑を押そうとしたら、いつもの場所にはシャチ○タしかなかった。

 おかしいな?

 泥棒…なら、同じ場所に置いていた通帳も持っていくよね。

 とりあえず、ダンボール箱は壁面に積み重ねた。まあ、見かけより軽いのが不幸中の幸いだったよ。

 でも、まるで倉庫みたいだ。

 その殺風景なダンボールの山の隣に、白く輝くウエディングドレス。

 僕はマネキンのウエディングドレスを見つめた。

 裾の広がったタイプじゃなくて、丈が短いのが彼女に凄く似合っていた。

 彼女は…名前もわからない彼女は、今どこにいるんだろう?

 テレビの電源を入れて、コタツに座った。

 曲を聞く気分でもなかったし、ワイドショーでもいいから誰かに何か喋っていて欲しかったんだ。

 そして、僕は天板に突っ伏した。

 キャスターか誰かの声がさえずっているのを聞くとはなしに聞いていると…、

『さて、一昨日結婚式場からウエディングドレスのまま姿を消した花嫁の続報です』

 え?ウエディングドレスって…まさか…。僕は顔を上げて、モニターを見た。

 画面には…彼女の写真が写っていた…!

 僕は思わずコタツを蹴散らせて、テレビに飛びついた。

 飛んでいった天板がダンボールの壁を大音響とともに崩壊させていたけど、

 音量を上げてテレビに集中する僕には、そんなの関係なかった。

 真面目な顔をした彼女の写真が大写しになり、その下にテロップが出ていた。

 

 <株式会社『惣流』社長令嬢 惣流・アスカ・ラングレーさん(20)>

 

「そ、惣流の社長令嬢ぉ?!」

 僕は思わず、テレビのフレームを両手で掴んだ。

『リポーターの葛城で〜す!私は今、問題の結婚式場の前にいます。ウエディングドレス姿で失踪した惣流・アスカ・ラングレーさんですが、たった今、その消息がつかめました!』

「ど、どこ!どこにいるんだよ!」

『惣流本社ビルで記者会見があり、社長室長の日向マコト氏から発表がありました。惣流・アスカ・ラングレーさんが婚姻届を昨日出したとのことです』

「こ、こ、婚姻届ってぇ!」

『しかもその相手は、結婚式場で置いてけぼりにしたキール・ローレンツ氏ではありません。え〜、日向氏によれば、昨年の地震によるロシア油田の壊滅に端を発した株式会社・惣流の業績不振を』

「相手は、相手は誰なんだ!」

 焦り、狼狽して騒ぐ僕とは対照的に、リポーターの葛城さんはにこやかに話を続けた。

『惣流の反社長派とされる副社長たち取締役が、EU最大手の商社ゼーレの傘下に入るべく、惣流・アスカ・ラングレーさんをいわゆる人身御供に出したとのことです。酷い話だと思いませんかぁ?』

「思う!思うよ!」

『その上、キール・ローレンツ氏は63歳。惣流・アスカ・ラングレーさんのお父さんよりも年上です。さらに、この一件は当の惣流・アスカ・ラングレーさん自身にも知らさず、秘密裏に進められていたそうです。アメリカの大学院で学んでいた彼女を言葉巧みに帰国させ、そのまま結婚式場に連れ込んだ。そして、無理矢理に結婚式を挙げ、既成事実を作ろうとした。くわぁ〜っ!あったま来るわねぇ!何これ?まるで江戸時代かなんかの政略結婚じゃないの。こんなの、許せないわ!』

「そうだよ!許せないよ!絶対に許せないよ!」

 画面では思い切り盛り上がってる葛城リポーターが、カメラに迫っている。

『そりゃ、逃げ出すのが当然よねぇ!よくやったわ!それに未成年じゃ親の承認がいるから、彼女が20歳になっのので計画が進められたんだって!信じられないわね、もう!えっと、彼女は社長派の助けを借りて、結婚式場から脱出したのだと、そう発表されました』

 僕は葛城レポーターの熱意溢れる報道に、テレビに向かって何度も頷いていたんだ。

 でも…、あれ?何か、凄く大切なことを忘れているような…。

 何だったけ?

『それから、社長室長の記者会見で報告されたのがゼーレとの関係を白紙に戻し、ゼーレ派の取締役はすべて解任となったとのことです。その上で、惣流・アスカ・ラングレーさんを新社長とし、現社長は会長職になるとの発表を行いました』

 か、彼女が社長!しかも、あの「惣流」の!

『さて、その新社長となった、惣流・アスカ・ラングレーさんが婚姻届を出したということですが…』

「あああっ!そ、それだ!あ、相手は誰だ!」

 葛城レポーターは、手元のメモを読み上げた。

『現在、判明しているのは、そのお相手は、第3東京市に在住の碇シンジさんとのことです』

「何だってぇ!」

 僕はまず叫んでから、自分の名前を確認した。

 僕の名前は、碇シンジ。住所は、第3東京市富士見区…。僕の名前は、碇シンジ…。

『あ!今、お二人の写真が届きました。こちらが新郎となる、碇シンジさんです!』

 僕はただ呆然と、モニターを見つめていた。

 画面には赤い外套を着てサングラスをつけた、彼女と腕を組んでいる青年の写真が写っている。

 その青年は実に幸せそうな顔をしていた。

 あれって、僕?僕…だよね…。

 どうしてあんな写真が?あれってデパートの中だよね。

『くぅぅぅ〜!幸せそうじゃないですか!えっと、婚姻届は昨日提出され、碇シンジさんは婿養子となって惣流家に入るとのことです。花嫁失踪から、会社のお家騒動を経て、急転直下幸福な結婚でハッピーエンドを迎えたってわけです!あ〜、私も幸せな結婚がした〜い!以上、結婚適齢期の美人レポーター、葛城ミサトがお送りしました!』

 こ、婚姻届?婿養子?何、それ?えっと…。

 あぁ〜っ!何が何だか、全然わかんないよ!

 パニックになっている僕の耳に、電話の呼び出し音が入った。

 崩れたダンボール箱を掻き分けて、ようやく発見した受話器から聞こえたのは、この世で一番聞きたくない人の声だったんだ。

『私だ。勝手に婿養子になりおって…馬鹿め』

「と、父さん」

『しかも、相手が惣流の新社長だと?お前、いつ知り合ったのだ』

「あ、あの、だから、僕にも。何がどうなってるのか」

 その時、白く美しい手がスッと伸びてきて、僕から受話器を取った。

 見上げると、そこにはにこやかな顔の彼女が立っていたんだ!

 あの、赤い外套を着て、僕に向かって微笑んでいる。

 僕のもやもやは一瞬で吹き飛んでしまった。もう、何がどうでもいいや。

 彼女は、その愛らしい唇に一本指を当てて黙ってろと僕に伝えた。

 そして、受話器の向こうの、気難しい髭親父に話し掛けたんだ。

「はじめまして、私、惣流・アスカ・ラングレーと申します。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。御義父様」

 僕の推理では、父さんはアスカのこの『御義父様』という一言でやられたんだと思う。しばらく間があいたから。

「あの…御義父様?はい。いえ、そんな…。持参金代わりだなんて…」

 彼女はそうしおらしく言いながら、右手でガッツポーズを作っている。

「いえ、たとえ御義父様でも、主人をそのようにおっしゃられては私、許しませんわ」

 げげ!父さんに反抗してるよ。信じられないよ。父さんに楯突ける人がこの世に存在するなんて。

 あ、さっき、彼女、僕のことを主人って…。主人って主人のことだよね。

「まあ、そんな…。そんなに謝られては私の方が困ってしまいますわ、御義父様」

 間違いない。彼女は確信犯的に、御義父様を使ってるよ。しかも、あの父さんが謝ったみたいだ。

「明日の夜ではいかがでしょうか?はい。喜んで。はい。では失礼致します」

 僕は、父とこんなに自然に話せる他人を始めて見た。というよりも、母さんとレイだけだもんな。僕ですら、父さんの前では…。

 彼女は受話器を置くと、僕の方を見て小首をかしげた。

「ごめんね、ちょっと時間かかっちゃった」

「あ、あの…」

「その日のうちに戻るつもりだったんだけど、遅くなっちゃった」

「じゃ、あのメモは…?」

「ああ、あれ?ちょっと出かけるから、ごめんねって。それだけの意味だったんだけど」

 昨日の夜。僕の激流の如く流した涙の意味は何だったっけ?

「そうそう…」

 それから、彼女は外套のポケットから何かを出して、僕に手渡した。

 なくなっていた印鑑と、運転免許証だった。あ、免許証もなくなってたんだ。気がつかなかったよ。

「これ、借りてたから。婚姻届出すのに、必要だったの。ありがとね」

「う、うん」

「それと、アンタ、入り婿ね、文句ないでしょ」

「あ、な、ないけど…」

 彼女の言うことに僕が逆らうわけないじゃないか。で、でも…。

「僕でいいの?本当に」

「アンタ、馬鹿ぁ?悪いんだったら、勝手に手続きしないでしょうが」

「だけど…」

「はは〜ん、私がアンタの実家に援助してもらうために、アンタと結婚したと思ってんじゃない?」

「え、えっと…」

「ほ〜んと、わかりやすいヤツね。安心してよ。ま、候補に上がったのは、確かにアンタの実家のせいだけどね。

 でも、アンタを選んだのはこの私よ。この目でしっかり見てね。

 ヤなヤツなら、会社がどうなろうが、結婚なんかしない。アンタが…」

 彼女は僕をじっと見つめた。その頬が少し赤かった。

 それでも、彼女は僕から目を逸らさない。

「恥ずかしいから、一回しか言わない。よっく、聞いておきなさいよ!」

 赤い外套を着た彼女は、腰に手をやると、大きく息を吸い込んだ。

「あの日、アンタといて、楽しかった。これからも、ずっと、一緒にいたいと思った。

 いい?絶対に会社のためじゃないんだからね。私のためにアンタを選んだんだから!」

 そして、すっとその勝気な目に弱弱しさが一瞬見えたような気がした。

「それでも…駄目?」

 僕は、即答した。

「ありがとう。え、えっと…」

 彼女の名前は…?なんていったっけ。

「ふふふ。アスカよ。アスカ。奥さんの名前くらい、すぐに覚えなさいよ」

「あ、うん。アスカ、ありがとう!僕、喜んで、お婿でもなんでもなるよ」

 アスカの顔が一瞬で真っ赤になった。態度の割に、意外と初心みたいだ。

「と、ところで、何この部屋?ダンボールの山じゃない!」

「あ、これ妹のクリスマスプレゼント」

「トイレットペーパーが?変なの」

「うん、ちょっと変わったヤツだから」

「ふ〜ん、そうなんだ。あ!」 

「な、何?」

「ハンバーグ!」

「はい?」

「まさか、作ってないんじゃないでしょうね!」

「だ、大丈夫だよ。ちゃんと作ったよ。食べる?」

「と〜ぜん!早くしてよ!」

 アスカはダイニングテーブルの椅子に腰掛けて…、テーブルを両のこぶしでバンバン叩いた。

 おいおい、幼稚園児じゃあるまいし。

「ごめん。暖めなおすから」

 僕は冷蔵庫からタッパーを出すと鍋に移した。レンジは便利だけど、風味が落ちるからね。

 その僕の姿を、アスカは目で追っている。

「それ、昨日作ったの?」

「うん、ごめんね。今から作り直したら、時間かかるから」

「いいわ。私が悪いんだから。でも嬉しいな。突然いなくなったのに、ちゃんと作ってくれたんだ」

 にっこり微笑むアスカに、僕はノックダウン寸前だった。

 まだ実感がない。このアスカが…こんな美人が僕の奥さん。ちゃんと入籍も終わってるんだって。

 雲の上を歩くような気分で、準備をする僕にアスカは色々説明してくれた。

 テレビで出てきた二人の写真は、やはりデパート内でうろうろしていた時に撮ったそうだ。

 それから、突然出現したマネキン人形や彼女のし…下着も、社長室の人たちの仕業だと。

 僕が買い物に行ってる間に、婚姻届に必要なものを調達したとか。

 なるほどそういうことだったのかと納得しながら準備を終え、僕は彼女の前にハンバーグを出した。

 コンソメスープとレタスをちぎったサラダくらいしか準備できなかったのが残念だけど。

「わぁ!美味しい!シンジ、アンタ、凄いよ、うん」

「ありがとう」

 それから、アスカは黙って、でも機嫌よく食べ終った。

「ごちそうさま!ねえ、シンジ!」

「な、何?」

「あ、あのさ。私、家事駄目なの。教えて…くれる?」

 上目遣いに僕を見るアスカは、例えようがないほど可愛かった。

「も、もちろんだよ。ふ、ふ、夫婦なんだろ」

 はぁはぁ、今の一言は勇気が要った。

「うん!ちょっとくらい拙くても怒らないでよね、ね?」

「大丈夫だよ。ちゃんと教えてあげるから」

「ふふふ、嬉しいな。あ、でも、仕事があんのよね。う〜ん、社長なんか引き受けるんじゃなかった」

 アスカは頬を膨らましている。そんな顔も可愛らしいんだよね。惚れた弱みかな?

 そういや、アスカは20歳になったばかりなんだよね。

 僕は25歳なのに、5つ年下の彼女の方がしっかりしてるよ。

「そ〜か、いいこと思いついた。シンジ、アンタ副社長になんなさいよ!」

「え?ええっ!」

「うん、それがいいわ。決定!アンタは副社長。これで二人はずっと一緒」

「ち、ちょっと待ってよ。僕が碇の家から飛び出したのは、父さんに副社長になれって言われたから」

「いやなの?シンジ。私と一緒はイヤ?」

 僕は一生アスカに頭が上がらない。アスカの潤んだ瞳を見て、僕はそう直感した。

「それで…、いいよ」

「やった!あ、そうだ。大事な事、忘れてた!」

「え?何?」

「今何時?」

「えっと、2時半」

「え〜っ!時間ないじゃない!シンジ、急ぐのよ!」

「何を?」

「結婚式!5時からなの!」

「誰の?」

「アンタ、馬鹿ァ!私とアンタのに決まってんじゃない!教会予約してんの。ほら、私、そのドレス着なきゃ」

「え、じゃ、僕、何着たらいいの?」

「アンタは式場にタキシードあるから。サイズはこのアンタの服で合わしたから」

 そう言って、アスカは赤い外套を脱いで、Tシャツの裾に手をかけた。

「ちょっと、シンジ。私着替えんのよ。どっか行きなさいよ!」

 アスカが睨んだので、僕は慌ててトイレに駆け込んだ。

 あの…、アスカは僕の奥さんなんだよね。着替えるたびに、どこかに行かなきゃいけないんだろうか?

 これから…僕はどうなってしまうんだろう?

 会社をクビになって、まだ2日しか…。

「ああっ!」

『どうしたの?シンジ』

「僕がクビになったのって、もしかして…」

『ご明察。アンタのいた会社、うちが株持ってるから』

 ははは、僕ってアスカの掌の上で動いてたんだ。

「ちょっと、アンタ!」

 だから、アスカ。それは10年連れ添った夫婦の…。僕は笑いがこみ上げてきた。

「背中のファスナー手伝ってよ!」

 僕は扉を開けて、散乱するダンボール箱という殺風景な舞台に、光り輝く彼女を見つけた。

 思わず見とれてしまうほど、彼女のウエディングドレス姿は美しい。

「ち、ちょっと。そんなに見つめないでよ、て、照れるじゃない」

「うん、綺麗だ…」

 アスカは真っ赤な顔になって、俯いてしまった。

 やっぱり、20歳の女の子なんだ。

 頭が良くて、大胆で、大会社の社長なんだけど、アスカは20歳の女の子。

 そして、信じられないけど、僕の奥さん。

 背中のファスナーを上げてあげると、アスカが真っ赤になって僕に言うんだ。

「あ、あのね。教会で結婚式でしょ」

「うん」

 アスカは背を向けたまま、俯いて小さな声で言った。

「誓いのキス…するんだよ。私たち」

 僕は顔面に身体中の血が昇ってきたのを感じた。

 き、キス、アスカとキス。僕とアスカがキス。キス、キス、キスキスキスキスキス!

「だから…ね。もし、失敗したら…恥ずかしいから…その…予行演習ってのを…」

 

 

 

 ちゅっ…。

 

 

 


 

 

 12月24日、聖夜の日。

 僕は、アスカとともに生涯を過ごすことを誓った。

 出逢ったのはたった2日前だったけど、アスカは言ったんだ。

「出逢ったのが遅かっただけ。1年前であろうと、10年前であろうと、私とシンジは運命の二人なんだから。

 間に合ってよかったんじゃない!」

 そう、間に合ってよかった。

 奇蹟が起こっても信じられる、そんな特別な日に。

 結婚式の後、殺到するマスコミにアスカはにこやかに、そしてはっきりと言った。

「今日、私は一生分のプレゼントを神様にいただきました」

 それが僕なんだって。て、照れちゃうよね、はは。

 それに僕の方だって、そうなんだよ。ね、アスカ。

 

 

 

赤い外套を着た女 − 下 − おわり

 

 


<あとがき>

 どうも、ジュンです。2002年の聖夜記念SSでした。

 最終回を何度も書き直しましたが、少しシンジがヨワイかもしれません。完全に振り回され型になってしまいました。ただ、アスカに振り回されるなら、彼に文句はないと思いますが。

 因みにこのタイトルと、外套の下にウエディングドレスというのは、横溝正史の『青い外套を着た女』からいただいています。

 

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